従来の消費者の購入プロセスは、DM、新聞広告、テレビCMなどを見た後、店舗に行って購入するという、いたって直線的なものでした。しかし技術が進歩するにしたがって、消費者の購買プロセスは、複雑なものへと変化してきています。例えば、製品を店舗の陳列棚で探すことなくネットで購入したり、購入を決めるまでにネットと実店舗両方で検討することが可能になりました。今日のマーケターは顧客がどんな場所にいようとも、彼らと最適な形でつながる方法を探すことが必要な時代となってきたといえます。
2015年にInfo Trendsは「カスタマーエンゲージメント技術、北米市場の状況」という調査を実施。北米の大手企業経営層400人に「カスタマーコミュニケーションマネージメントにまつわる最優先事業目標」について質問したところ、「顧客体験を改善すること」という回答が最上位という結果となりました。
なぜ顧客体験が重要なのか
顧客の記憶に残るような体験を提供することは、簡単なことではありません。なぜかというと、エンゲージメントとロイヤリティを促すような差別化された顧客体験を構築するためには、戦略と技術を慎重に連動させる必要があるからです。賢いマーケターは、良質なコミュニケーションとエンゲージメントを消費者に提供すれば、ROI(投資収益率)を改善できるということは既に知っています。
このことを示す数値として、Forresterの顧客体験指数に掲載されている優良企業の年間平均成長率を見てみると、2010~2015年の5年間で17%と高い成長を遂げています。一方で指標に掲載されていない企業の成長率はたったの3%にとどまっているのもまた事実なのです。
顧客体験の中核にあるもの
良質な顧客体験の実現において、もっとも高いハードルは一体何でしょうか。それは、消費者自身が、関連性が高いと感じる、または興味を持つようなコンテンツを提供することです。現在の消費者たちは、多数のチャネルから膨大なメッセージを毎日受け取っています。その中で消費者の目に留まるコンテンツを届ける、ということはとても困難なものです。
Info Trendsが実施した「2015年度カスタマーエンゲージメント技術、北米市場の状況」の調査によると、顧客体験を改善させるための最良な戦略は、データを起点とした(データドリブン)パーソナライゼーションとカスタム化された特典提案だといいます。
パーソナライゼーション実施の難しさ
2015年10月に出版された「2015年度コンテクチュアルマーケティングの原則」と題したForresterの調査では、マーケターの91%がパーソナライゼーションの価値を理解していて、今後数年間はパーソナライゼーションを通じて顧客との関係を改善することを優先的に計画していくという結果が出ています。
しかし、レポートによるとマーケターのほとんどが簡単なセグメンテーションで終わらせてしまっていて、個々の顧客に向けてカスタマイズしたメッセージを届けるまでには至っていないようです。
顧客は高度なパーソナライズオファを期待しているにも関わらず、マーケターの半数以上(66%)が属性データを元にターゲットへの特典提案を作成しているにすぎず、これでは残念ながら自社ブランドを差別化させるには十分とは言えません。
マーケターは今一度パーソナライズ戦略を再検討する必要があるといえます。主にパーソナライゼーションの鍵となると考えられるのは以下の項目です。
- 関連性:コンテンツが顧客の興味と趣向にマッチしていて、カスタム化されている
- 適合性:コンテンツが顧客のリアルタイムの行動、意思、趣向に基づいてパーソナライズされている
- 利便性:コンテンツに対して簡単に反応しやすい
- 頻度:パーソナライズされたオファやコンテンツが顧客に合った頻度で配信されている
- タイムリー:顧客がブランドとエンゲージ(取引)したいと思ったときにコンテンツを提示している
- 一環性:全てのチャネルにおいてコンテンツの一環性が保たれている
Forresterのレポートは、よく使われるチャネルにおいてのパーソナライズオファやコンテンツのほとんどは、的を外していると指摘しています。消費者は現在実施されているメール、DM、SMS、ウェブサイトでの製品レコメンドなどよく使われる主要チャネルでのパーソナライズ体験に満足していないと考えられます。
このことからもお分かりいただけるように、今日のマーケターは、顧客とのエンゲージメントをもっと効果あるものにするために、何を、どう伝えるのか、高度にパーソナライズされたメッセージを確実に伝える事から始めなければならないのです。
マーケターと顧客のギャップ
適切なツールを用いれば、顧客に対して伝えたいこと、そして顧客が企業側に望んでいるもの、両者のギャップを埋めることは可能です。以下のようなポイントを押さえて、顧客とのコミュニケーションのための設計図を作りましょう。
- 戦略を立てることからはじめる
何を達成したいのか、何が事業を動かす原動力となりうるのかを把握する。 - データを把握する
アカウントのプロフィールデータ、ロイヤリティプログラムデータ、属性、郵便番号、地理的属性、などお客様のあらゆるデータを棚卸する。 - 市場に合わせたメッセージのマッピングをする
データをセグメント化し、市場を把握。そして購買者個々のペルソナを作成して、メッセージと特典提案をターゲットに合わせて行っていく。ペルソナを明確にすることによって、何を、どこでいうべきなのかが明確になるので、ペルソナ制作は重要となる。 - クリエイティブが重要
想像をかきたてることは、盛り込まれる情報同様に重要なもの。特典提案からのサプライズとコンテンツとメリットがうまく調合されている必要がある。すべてのチャネルから情報が大量に入ってくる今、消費者の興味をひくというのは難しい。複数にチャネルにまたがっている顧客と切れ目なく会話ができるようなクリエイティブの制作が急務。 - テスト、測定、モニター、そして結果を報告する
目標は必ずしも売り上げに直結するものである必要はない。ブランド認知や、口コミを増やすなどの各々に合った目的を選ぶことが重要。クライアント企業が抱える目標に対して、テスト、モニター、そして測定し、継続的にその結果を報告することが欠かせない。
まとめ
今日における顧客とのコミュニケーションにおいて、カスタム化が必須であるということはお分かりいただけたかと思います。顧客とのエンゲージメントをもっと効果あるものにするために、何を、どう伝えるのか、高度にパーソナライズされたメッセージを確実に伝えるにはどうすれば良いのかを、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。
出典:一般社団法人PODi http://podi.co.jp/
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