国内の広告費はプラス成長を続けており、Web広告媒体費用は昨年初めて1兆円を突破しました。EC市場の発展と競合他社増加の影響もあり、この動きはさらに拡大を見せると言われていますが、その一方でROAS(投資回収率)は著しく低下の一途をたどっています。
新規顧客獲得に欠かすことができない【広告投資でできた「借金」をいかに早く返せるか】というテーマは、EC事業者の間で重大課題として認知が広がっています。投資回収効率を上げるためには、リピート顧客育成による利益獲得が最も適しています。
お客様との関係は費用を掛けてでも大切
上図の通り新規顧客については、顧客リレーションシップが全く無いところから商品を購入いただくので、プロモーション費用がかかり、広告費などを差し引くと赤字になる場合がありますが、既存顧客は、商品・自社ブランド価値をすでに実感しているので新規顧客よりもプロモーション効率がよく、販売利益率が高くなります。
顧客との関係(リレーションシップ)が重要であると言われるのは、目の前の売上を増やすため・売る姿勢を強く押し出す販売手法やコミュニケーション戦略を取ってしまうと、かえって顧客離反を招く結果になり、顧客から得られる生涯の通算利益、LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)が減少してしまうからです。
そのため、初回購入のお客様を「それっきりのおつきあい」では終わらせず、一定のコミュニケーション(プロモーション)コストを掛けてでも顧客との関係を維持して、末永く購入を継続いただく方がLTVが高くなるのです。
「既存顧客」(=リピート顧客)とは、一般的に一度でも購入実績のあるお客様を指しますが、ひとくちに既存顧客と言ってもその状態は様々です。
商品を一度しか購入していない、且つ商品理解やブランド認知が行き届いていないお客様と、商品を3年以上継続して購入し、ブランド認知が浸透しているため関連商品の購入実績もあるお客様とでは、最適なコミュニケーションの方法は明らかに異なってきます。
また、一時頻繁に商品を購入していただいたものの、直近しばらく購入が途絶えた「休眠顧客」(=スリープ顧客)と、直近で購入実績のある「優良顧客」(=アクティブ顧客)では、やはりコミュニケーション方法が異なってきます。
顧客をセグメンテーションなしにひとまとめにして扱うのではなく、「誰に、いつ、どんな情報を提供してリピート利益増に結びつけるか」ということを意識することが、リピート利益を増加させるための顧客コミュニケーションのポイントとなります。
通販LTV最大化のために、優良顧客を増やす「CRM施策」を検討するにあたっては、適切な基準でセグメンテーションを行い、それぞれの顧客セグメント毎に対応して施策を最適化することが重要です。
すなわち、企業の視点ではなく、あくまでもお客様の心理状態を読み解き、「お客様視点」で捉えることが重要 ということです。